アンは春の訪れとともにプリンスエドワード島にやってきました。

下は『赤毛のアン』の2章と3章から抜き出した白い花の描写です。村岡花子訳より抜粋しました。
「野生のすももがかげろうのような花をしだれさせている窪地を通ったりして」「あちこちのりんごの果樹園の香りで空気はかぐわしく」「月の光をあびて一面に白く咲いた花の中で眠るなんて」「花ざかりの山桜」「あの土手からはみだしている真っ白なレースのような木」「何から何まで真っ白な着物を着て、すばらしい、かすみのようなヴェールをつけた花嫁」「ある風変わりな農夫が植えた巨大なりんごの木が、ぎっしろと枝々をさしかわして立ちならんでいた。頭上には香りたかい、雪のような花が長い天蓋のようにつづいていた」「ところどころ野生のすももが岸からのりだしているようすは、爪先立てて水にうつった自分の姿をながめる白衣の少女を思わせた」「行く手の坂に白いりんごの果樹園があって」「花ざかりの木々がぼうっと白くかすんでいた」「大きな桜の木は枝が家とすれすれになるくらい近かった。白い花がぎっしりと咲き、葉が見えないほどだった。家の両側は、一方はりんご、一方は桜の大きな果樹園になっており、これまた花ざかりだった」
今年の春は特にきれいで、5月下旬から6月のはじめにかけて、まさに小説で描写されているままの世界が広がっていました。ここ数年、冬は日本に長期滞在してはいますが、長い冬が終わった後の春の景色は格別です。アンは『アンの青春』で「あたしは春の盛りに生れたいと言ったでしょうからね。さんざしやすみれの花といっしょにこの世へあらわれるのはすばらしいわね。そういう花たちといつも乳姉妹のような気がするでしょうよ。でも春に生れなかったのだから、できることは、あたしの誕生日祝いを春の盛りにすることだけよ。」と、ダイアナに春のすばらしさを力説しています。アンだけではなくて、アイランダーも春を心待ちにしていて、新緑の世界を思う存分満喫しました。このブログを書いている6月中旬はルピナスが咲いて、初夏の景色です。
島に咲いているさくらの花の正式な名前をしっかり覚えられないのですが、Chokecherry、Pin Cherry、Serviceberryなどがあります。下はりんごやさくらなど今年の春に道端で撮った白い花です。ちょっと多いですが、ご覧いただければ嬉しいです。